春日部のピアノ教室あんぷらぐどの講師、T先生のQ&Aです。
Q.1 指使いって、ぜったいに守らなければいけないのでしょうか?
A.
日本とアメリカにおける、交通標識の話を、例にしてみましょう。
「日本で交通標識にしたがわないと、どうなる?」
と尋ねて、よく返ってくる答えが「警察に捕まる」です。
ピアノで考えると、これ、すなわち
「指使いを守らないと、先生に怒られる」
って言うのと同じ気がしません?
アメリカでは、どうか?
実は「交通標識にしたがわなかったら、(事故を起こして)確実に死ぬ」
と言われています。
「スピード落とせ」と指示があるのに、
そのままブレーキを踏まないでいれば、
壁に激突したり、崖から転落したりするわけです。
つまり必要な所にしか、交通標識は置かれていないのです。
日本の場合、「あまりに多すぎて、どれにしたがったら良いか、わからない」
と言うのも、良く指摘されることです。
指使いも、交通標識で言えば、アメリカと同じで、
必要な所にしか記さないのが原則です。
たとえば、ドーレーミーファーソと右手で弾くのだったら、
ドの音の下に1と書いて置けば済みます。
そう言う意味では、日本で出版される楽譜には
「無駄な指使いが書かれているな」と思うことも、確かにあります。
見方を変えるなら、
「どうして、この指使いなんだろう?」と考えてみるのは、
大いに必要だし、合理的でなければ、ならないのです。
とにかく、書かれた通りにしたがっていれば
「取りあえずは事故に遭わない、(弾くのに)つかえないで済む」
と考えるべきです。
いっぽう「絶対に従わなければいけないか」と言うと、そうでもないのです。
活字になると、どうしても信用してしまいがちですが、たとえば、
かの有名なハノンが音階で書き記した指使い、へ長調について考えて見ましょう。
シ♭を右手は4、左手は2で弾くように指示されているものの、
実際は3で弾いたほうが弾きやすく、ファとソの音を右手は2~1、
左手は3~2で弾くのが正解です。
ところが“慣れ”と言うのは恐ろしく、
私など実際、ハノンの指定した指使いで弾くことしか、すでに出来ません。
ただし音階ではなく、短いパッセージ(箇所)なら3でも弾けます。
望みが叶うのであれば、ぜひ提唱したいところで、自分の生徒には
「納得できるのなら、ハノンには従わないほうがいいよ」
と、はっきり勧めています。
他の調でも「再考の余地あり」ですので、
興味がおありでしたら、確かめてみてください。
つづく
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