日本人がピアノと仲良くなるために遺しておきたい言の葉
[第1章] 楽器の機能的奏法について
遺言その8
指の強さではなく、音量をどう変化させるかに
興味を持つ方が賢明である
望んでいる音量が得られない場合に
「指が弱い」と言う考え方は、やはり短絡的な気がする。
考えられる要因は三つ。
まず前述したように、本当の意味での<ミスタッチ>が起きている、
つまり何らかの理由で体のどこかに無駄な力が入り、
鍵盤を速く押せていない場合。
次に、これから掲げていく種々の機能的な奏法を知らない場合。
裏を返せば、音が鳴りすぎてしまう事態も当然、起こりうる。
更に、次章で触れる身体的奏法上の問題として、
音の芯を作るコツを知らない場合である。
以上の3点を理解した上で、なお必要なのが、
各メーカー各楽器の特性に応じて音量を変化させる意識を持つこと。
たとえば自動車の教習を受けていて、
小道から左右のどちらかに曲がり、
何車線もある広い道路へ出るとする。
入りたい車線が手前なのか、より奥なのかで、
ハンドルを切る分量が違ってくる訳だが、
その際、教官は「はい2分の1だけ回して」とか
「2回転させて」とか言う指示は出さない。
あくまでも目分量にしたがい回していく訳で、
速度に関しても理屈は同じ。
「時速を何キロに落として」とか注意している場合ではなく、
速すぎればハンドルを切り損ねて事故につながる危険があるため、
即座に補助ブレーキを踏まれるはず。
経験値が上がれば、感覚より数値に頼るほうが、
むしろ面倒であると思うようになるのは当然である。
ピアノも絶対値ではなく、自分なりに種々の音量を出せるか、
相対的に試して見るのが肝要。
まずはフォルテとピアノが出せるか。
ではフォルテシモとピアニシモは。
更にメゾピアノおよびメゾフォルテと、
一つの楽器から6段階もの音量が出せれば、もう充分と言える。
自動車ではエコ問題が絡んでくるものの、
ことピアノに関しては、大排気量の方が有利なのは否定できない。
ただ少ない排気量の軽自動車だって、
安全かつ楽しく走れるのも事実である、
私の愛車が2シーターでスポーツタイプの
“軽”だから言うわけではないが。
閑話休題。
音量に関して更に指摘するなら、
伴奏やアンサンブルをする際のバランスも、
また気になるところだが、今は触れない事にしておく。
機能的奏法と言う観点からは離れてしまうのものの、
たとえば一流ともなると、自分専用の楽器や調整の方法を
限定しているピアニストもいる。
まさに“弘法は筆を選ばず”なんて言ってられるほど、
現実は甘くない。
たとえば弱音を出すのが得意ならば、
なるべく楽に最強音が出るよう設定しておいて反面、
ギリギリまで音を絞り込んでいき、
誰も真似の出来ないような美しいピアニシモで、聞く人を魅了する。
逆に楽器を鳴らすのに自信があるのだったら、
弱音は楽に弾いておいて、いざとなったら、
それこそ耳元で鳴っているのではないかと
錯覚するほどのフォルテシモで圧倒する。
後者こそ「ピアニストではなくフォルターかも知れない」
なんて、皮肉を言う気は全くない。
むしろ前者の場合、CDの録音では「剃刀のようなシャープさ」
と形容されたピアニストが、実際の演奏に接してみたら
「音が弱くて驚いた」と指摘される事すらある訳で、
その人なりの音楽が展開できているのであれば、構わないと私は思う。
すでに故人となられたフォルテピアノ奏者の小島芳子さんが、
あるラジオ番組で、ご自身のCDについて
「実際は、こう言う音ではないんですけどね」
と強調されていたのは、印象的だった。
「とても真面目で正直な方なんだろうな」と感じ入った次第だが、
人間の耳が絶対的な音量にのみ支配される訳ではない事は、
すでに何度か述べた通り。
CDと同じ筈はないし、ご本人の頭の中が覗ける訳でもないのだか、
彼女の思い描かれていた音像は、
実演でも充分に聞く人の心に届いていたと信じたい。
あえて自分に関してバラすと、
私は“弘法”ではないものの、<筆>を選ばない。
比較的どんな楽器とも仲良くできるタイプで
ーと言うか奏法を自負して演奏に臨んでいる訳だがー、
ただし、あくまでも調整が、ある程度は出来ている場合に限る。
前述したとおり、鍵盤より先の部分になると、
彼らだけが頼りのピアニストに取って、
知己と呼べる調律師の方と出会えているのは、
本当にありがたい。心より感謝。
たださすがに地方までは同行して頂けず、
かなり以前のこと、とあるホールで終演後に、
そちらで調律された方より
「いや、うまいですね~」と感心されたのには正直、参った。
なるほど<一流>ではないから、楽器にも調整にも拘りなどないものの、
いちおう<はしくれ>として「うまい」と言われても、
どう返したものか窮してしまう。
ただ自分の調律した楽器を、
それこそ初めて<うまく>弾いてもらえた感激の言葉だったのは、
察しがついた。
自慢にもならない話をした理由は他でもない。
どこへ置くつもりなのか意図をはかりかねるが、
一般のホールに設置されている
コンサートグランドを買っていく人物がいると聞いたから。
ピアニストも調律師も関係ない。
その場で気に入れば、入手する。
好事家の愚行であり、ホールもさぞや迷惑であろうし実際、
売る方もどうかと思う。
レーシングカーで公道は走れないし、
サラブレットをアスファルトの上で走らせたら足が折れてしまう。
調律の方法も、コンサートチューニングと家庭用では、
きちんと理由があった上で全く違う実状を、
はばかりながら第4章で軽く述べてみたい。
大部分のピアニストは、
極限とも呼べる“一触即発”の状態に調整された楽器を、
その日その日のステージ上で、
細心の注意をはらいながら弾くのが原則である。
にも関わらず音楽学者の中には、
「楽器が良いから簡単に音が出せている」
と考えている向きも存在するのだから、呆れ返る。
本気で思っているのなら、ぜひ一度サーキットへ赴いてもらい、
フォーミュラカーに乗り込み、時速300kmで走ってみてほしい。
彼の理屈では「車が良ければ簡単に速度が出せる」はずなのだから。
私の知る限り、速度は出せてもハンドルを軽く切っただけで車がスピンし、
壁に激突するはず。
仮に極限へは苦労せず持っていけたとしても、
それをコントロールする事こそ至難なのが分かっていない。
こうなってくると「指が弱い」と言うより、
「もっと別の部分が弱いのでは」と心配になるが、余計なお世話か。
よほど度胸がない限り、
どんなに経験を積んでも舞台上ではハイテンションになる。
むしろハイテンションになるから名演が生まれる場合もある。
“駿馬ほど本番で速く走る”は、師匠より聞かされた言葉。
「冷めた演奏になるかも」と心配するのは後回しにして、
まずは指より「頭脳を明晰に動かすことを心がけた方がよい」ぐらいで、
そろそろ話を収め、次の遺言へと進んでいこう。
今日もお読みいただきありがとうございます!
あんぷらぐどピアノ講師は、男性2人です。
一人は現役ピアニスト・言の葉T先生。
もうひとりが、その愛弟子O先生。
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